[あきた時評] 2004年1月10日

新語・流行語/テレビが大きく影響


 昨年12月に、2003年の「新語・流行語大賞」が発表された。年間大賞は「毒まんじゅう」「なんでだろう〜」「マニフェスト」の三つ。他に、「SARS」「バカの壁」「ビフォーアフター」「へぇ〜」などがトップテンの中に選ばれている。

 試みに、秋田大学の学生91人に、これらを知っている(関連する人物名、テレビ番組名、連想語が回答できる)かどうか、アンケートをとってみた。

 9割以上が「知っていた」のは、「へぇ〜」(97・8%)、「なんでだろう〜」(94・5%)、「SARS」(94・5%)であり、「ビフォーアフター」も78・0%と高率であった。「マニフェスト」は65・9%。一方、「毒まんじゅう」で「野中広務」を回答できたのは17・6%、「バカの壁」で「養老孟司」を回答できたのは11・0%であった(ただし「毒まんじゅう」では46・2%、「バカの壁」では37・4%が「聞いたことはある」と回答)。

 現在、新語や流行語を生み出し、行き渡らせるのは、テレビ番組とその出演者であると言って間違いないだろう。03年の政局の中で象徴的な発言であった「毒まんじゅう」も、200万部を超えるベストセラーとなった「バカの壁」も、「知名度」という点では、「へぇ〜」や「なんでだろう〜」には及ばないのである。

 実際、テレビ番組から生まれた「名セリフ」は、その後も繰り返し話題にされ、人々の記憶にも残りやすいようである。

 このアンケートとは別に、過去の「新語・流行語大賞」に選ばれた言葉についても、現在の学生がどの程度知っているかを調べてみた。1994年の「同情するならカネをくれ」(ドラマ「家なき子」、主演・安達祐実)をほとんどの学生が知っていたのは当然としても、84年の「教官!」について「スチュワーデス物語」もしくは「堀ちえみ」と回答できた学生が数人ながらいたのには驚く。彼らはこの年の前後に生まれたばかりなのだ。

 同じ84年の「鈴虫発言」(政治倫理問題が争点となる中で、当時の中曽根康弘首相が、野党を揶揄(やゆ)して「倫理、倫理と鈴虫のようだ」と発言)や「スキゾ・パラノ」(当時京都大学助手であった浅田彰氏が、旧来の定住型=パラノイア《偏執》型人間に対して、新しい逃走型=スキゾフレニー《分裂》型人間の在り方を提唱)は、知っている学生が一人もいなかった。

 政治やアカデミックな分野で注目された言葉は、たとえその当時の世相を象徴するものであっても、時期が過ぎれば一般の人々は忘れ去り、その後、好んで繰り返し話題にすることはないようだ。

 年が明けて2004年となった。年末には、また今年の世相を象徴する「新語・流行語」が話題になるだろう。その時期に、1年前の「新語・流行語」がどの程度記憶されているか、再び学生に聞いてみたい。

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