[あきた時評] 2004年10月9日

世界の新聞展/見比べ実感 視点の違い


 先週末の秋大祭に合わせ、教育文化学部でも、地域の人や高校生に大学を紹介するオープンキャンパスを開催した。

 私の所属する国際言語文化課程の企画は「世界の新聞展」。日本を含め世界11カ国の新聞41紙を一堂に集め、1面記事を中心に解説をしたパネル展示会である。

 企画を立てたのは、ちょうど夏の盛りで、これからアテネ・オリンピックが始まるという時期。オリンピックの開会式であれば、どの国の新聞でも取り上げるにちがいない。8月13日が開会式だから、まずは14日の新聞を集めることにした。

 私は日本の担当だったのだが、アテネとの時差により、開会式の時間帯は日本では14日の明け方となる。当然、14日の朝刊には間に合わない。一方、14日の深夜から15日の明け方にかけては、柔道の谷・野村が金メダルを獲得。15日の朝刊はこちらが1面トップになる。主要全国紙が朝刊のみである秋田にあっては、開会式を盛大に取り上げた新聞を手に入れることができない。東京の知り合いに頼んで、14日の夕刊を確保しておいてもらったのは正解であった。もちろん、私も駅のキオスクに通い、14、15日の朝日・読売・毎日・日経・産経・魁・河北は、確保してある。店員さんには、よほどの五輪マニアに見えただろう。

 展示会場では、日本のコーナーは素通りされがちであったが、1面全体を使った大々的な開会式の記事は、実は、秋田では(魁・河北以外では)目にすることがなかったはずのものなのだ。

 オリンピックの開会式といえば、日本の新聞ではおなじみの「日本選手団の入場行進」。ただし自国選手団の入場行進の写真を1面に掲げるのは、日本、韓国、中国というアジアの新聞の傾向のようで、欧米の新聞にはあまり見られなかった。そもそも、欧米の新聞では、オリンピックの開会式だけで1面を埋めるということはなく、アメリカの新聞ではフロリダを襲ったハリケーンの記事が、フランスの新聞ではローマ法王が聖地ルルドに訪れたという記事が、1面の主要な記事となっていた。

 今回、集めた日本の新聞は、全国紙5紙、地方紙5紙である。このうちの9紙が華々しくオリンピック開会式を取り上げる中で、沖縄県の「琉球新報」だけは、前日13日に宜野湾市で起きた、米軍ヘリ沖縄国際大墜落事故の続報を大きく伝えていた。この事故とその後の経過に関する記事は、オリンピックの期間中もその後も、この新聞の1面トップを占め続けた。

 本土の新聞とはあまりにも違う紙面構成。会場に来た学生の一人に聞くと、この事故のことを知らなかったと言う。

 新聞がその社会の「ものの見方(見え方)」を反映するとすれば、世界の視点の違いだけでなく、日本の中の視点の違いを知ることも、今回の企画の意図であった。

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