[あきた時評] 2004年12月18日

流行語大賞/連想語で分かる記憶の変化


 12月初旬に今年度の「流行語大賞」が発表された。「大賞」は、「チョー気持ちいい」。この他、トップテンには、「気合だー!」「自己責任」「新規参入」「セカチュー」「○○斬り(ぎり)!」「冬ソナ」などが選ばれている。

 ところで、今年1月の本欄で、昨年度の「流行語大賞」を取り上げた。年間大賞は「毒まんじゅう」「なんでだろう〜」「マニフェスト」の三つ。他にトップテン入りしていたのは、「SARS」「バカの壁」「ビフォーアフター」「へぇ〜」などであった。

 1年のうちに、「見慣れた顔」と「懐かしい顔」に分かれた気がする。私にとっては、「毒まんじゅう」「マニフェスト」「SARS」は、すでに懐かしい顔だ。はたして他の人はどうだろうか。

 今回も秋田大生100人に、これらの語を知っている(関連する人物名、テレビ番組名、連想語が回答できる)かどうか、アンケートをとってみた(カッコ内左側が前回、右側が今回の調査結果)。

 「へぇ〜」(97・8%→96・0%)、「なんでだろう〜」(94・5%→95・0%)、「ビフォーアフター」(78・0%→79・0%)のように、1年前と今回で知っている人の割合がほとんど変わらないものもあれば、「SARS」(94・5%→81・0%)、「マニフェスト」(65・9%→56・0%)、「毒まんじゅう」(17・6%→7・0%)のように、前回と比べて約1割ずつ、人々の記憶から消え去ったものもある。一方で、「バカの壁」(11・0%→44・0%)のように、この1年でいっそう知名度が上がったものもあった。

 学生の回答を見ていて興味深かったのは、流行語によって思い浮かべる連想語だ。「SARS」と言えば、1年前の回答で多かった連想語は、「病気」(「知っている」と回答した人の中での割合が24・4%)、「中国」(同20・9%)、「(新型)肺炎」(同19・8%)であった。今回多かったのは「病気」(同24・7%)、「中国」(同16・0%)で、「(新型)肺炎」(同8・6%)と回答した人は少ない。さらに、思わず目を留めてしまった回答が「C型肺炎」。「新型」が「C型」に変化したのか、「C型肝炎」に結びつけたのか。いずれにしろ、これが3人いた(前回はいなかった)。

 そうなのだ。人はこうして、新奇な言葉を、自分が元々知っている言葉に引きつけながら、記憶に留めようとする。記憶を引き出して更新するたびに、言葉の改変を行っているのだ。あたかも「一人伝言ゲーム」のように。

 「毒まんじゅう」にしても、今回の回答では「野中(広務)」は1割近く減ったが、なぜか「村岡(兼造)」という回答は3人から7人に増えていた。これもある意味で、今年の政局と秋田県民の感情を忠実に反映したものと言える。こうして古い記憶は新しい記憶の更新を受けて、本来あったものから別のものへと印象を変えていくわけだ。

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